the Garden of sinners -劇場版「空の境界」音楽集-
the Garden of sinners -劇場版「空の境界」音楽集-
オススメ度 ★★★★★
発売:2011年3月2日 収録時間:136分 定価:3675円 レーベル:アニプレックス
TYPE-MOONの奈須きのこ氏がWEB・同人時代から書かれていた「空の境界」。
それを全7章+αでufotableがアニメ映画化。
音楽には梶浦由記氏。実際に使用した曲を組曲風に編集している。
以降、ufotable×TYPE-MOONには梶浦氏は欠かせない存在に。
No. | Disc 1 曲名 | 時間 | 作・編曲 | No. | Disc 2 曲名 | 時間 | 作・編曲 | |
1 | in the garden of sinners | 2:19 | 梶浦由記 | 1 | 矛盾螺旋 Ⅲ-spiral | 13:21 | 梶浦由記 | |
2 | 俯瞰風景-Thanatos | 13:21 | 2 | 矛盾螺旋 Ⅳ-paradigm | 4:58 | |||
3 | 殺人考察(前) Ⅰ-something and nothing | 10:29 | 3 | 忘却録音-when the fairy tale ends | 15:16 | |||
4 | 殺人考察(前) Ⅱ-quiet romance | 2:26 | 4 | 殺人考察(後) Ⅰ-everything, not nothing | 10:01 | |||
5 | 殺人考察(前) Ⅲ-rain goes up | 1:41 | 5 | 殺人考察(後) Ⅱ-into the light | 7:16 | |||
6 | 痛覚残留-if I cry | 17:01 | 6 | 殺人考察(後) Ⅲ-epilogue | 2:01 | |||
7 | 伽藍の洞 Ⅰ-garan-no-dou | 8:58 | 7 | 空の境界 Ⅰ-kara-no-kyoukai | 7:58 | |||
8 | 伽藍の洞 Ⅱ-kyoukai-shiki | 0:59 | 8 | 空の境界 Ⅱ-snow is falling | 3:47 | |||
9 | 矛盾螺旋 Ⅰ-magician | 3:07 | ||||||
10 | 矛盾螺旋 Ⅱ-paradox | 10:29 |
TYPE-MOONの奈須きのこ氏がWEB時代に執筆し、以降も同人や商業化などに展開した伝奇小説「空の境界」。
それが「空の境界」。ufotableによって全7章+α分のアニメ映画化が行われた。
ある別作品にて(恐らく)奈須氏は「人生のある時期にしか許されないポエムだだ漏れテキスト」と語っていた。
アニメ映画化に際し劇判に抜擢されたのは梶浦由記氏。全編フィルムスコアリングである。
限定版ソフトに本編使用状態での音源CDが毎章封入されており、本作は7章までのその音源を章ごとの組曲形式に再編集したものである。
フィルムスコアリングであることで短い曲なども多いため、「一枚の作品にしてみたかった」とのこと。
梶浦氏といえば神々しい声楽と妖しいストリングス使いであり、ことバトルが絡むと中二病な雰囲気を全開にする作風。
そして原作者自身が「ポエムダダ漏れ」と語る「空の境界」において梶浦氏の音楽はベストマッチだった。
本作は1章「俯瞰風景」において初めて使用されたメインテーマとも呼べる「in the garden of sinners」のフレーズを中心に展開する。
本来は「俯瞰風景」のテーマでしかなかったようだが、上映時の人気を受けてメインテーマ扱いとし、全章においてこのフレーズが一つのカタルシスポイントとして組み込むようになった。
基本的に金管の音色の響かない梶浦音楽の妖しさは伝奇作品の映像との合わさりでより強まり、ゼロ年代梶浦氏の総決算の管弦組曲といえる程印象的な作品となっている。
奈須きのこという書き手は現代の国内に生き残った数少ない伝奇作家の末裔である。
伝奇とは怪奇である。伝承と知識を下地に、空想と対峙する。伝奇作品の音楽は怪奇音楽に近しい。
幸い、日本の劇判は怪奇音楽に長けた作家を多く生んでいる。しかし伝奇作品の音楽を担える音楽家は決して多くない。それ故に、DEEN版「Fate/stay night」で川井憲次氏というトップクラスの伝奇音楽を得た後、今作で梶浦由記氏という負けず劣らずの、しかも新鋭の伝奇音楽を手にしたのは奇跡的とも言えよう。
梶浦氏はストリングスこそ印象的だが、怪奇・伝奇音楽としての本領はデジタル部分にある。
これほど圧力のあるデジロックを組み込みながらもスタイリッシュにより過ぎず、土っぽい怪奇さを保って盛り上げられる作家は他に類を見ない。
梶浦氏がゼロ年代からその名を上げていった理由はそれではないかと思われる。氏の劇判は、土着的でありながら品がある。あるいは、神々しいにも関わらず俗っぽいのだ。
こと今回に関して、フィルムスコアリング音源の組曲化はただの完全版サントラにするよりも正解の選択肢と言える。
一曲一曲は決して単品での完成度は考慮されていない上、時間の短い劇場作品の音楽なので組曲化しても曲の流れが右往左往しない。
ソフト特典をお持ちでない人にも、お持ちの方にも改めて薦められる一枚。
ブックレットには奈須きのこ氏と梶浦由記氏による対談が掲載。カバーイラストは武内崇氏、塗りは逢倉千尋氏。デザインは山口御幸氏、兼田弥生氏(Veia)。
それが「空の境界」。ufotableによって全7章+α分のアニメ映画化が行われた。
ある別作品にて(恐らく)奈須氏は「人生のある時期にしか許されないポエムだだ漏れテキスト」と語っていた。
アニメ映画化に際し劇判に抜擢されたのは梶浦由記氏。全編フィルムスコアリングである。
限定版ソフトに本編使用状態での音源CDが毎章封入されており、本作は7章までのその音源を章ごとの組曲形式に再編集したものである。
フィルムスコアリングであることで短い曲なども多いため、「一枚の作品にしてみたかった」とのこと。
梶浦氏といえば神々しい声楽と妖しいストリングス使いであり、ことバトルが絡むと中二病な雰囲気を全開にする作風。
そして原作者自身が「ポエムダダ漏れ」と語る「空の境界」において梶浦氏の音楽はベストマッチだった。
本作は1章「俯瞰風景」において初めて使用されたメインテーマとも呼べる「in the garden of sinners」のフレーズを中心に展開する。
本来は「俯瞰風景」のテーマでしかなかったようだが、上映時の人気を受けてメインテーマ扱いとし、全章においてこのフレーズが一つのカタルシスポイントとして組み込むようになった。
基本的に金管の音色の響かない梶浦音楽の妖しさは伝奇作品の映像との合わさりでより強まり、ゼロ年代梶浦氏の総決算の管弦組曲といえる程印象的な作品となっている。
奈須きのこという書き手は現代の国内に生き残った数少ない伝奇作家の末裔である。
伝奇とは怪奇である。伝承と知識を下地に、空想と対峙する。伝奇作品の音楽は怪奇音楽に近しい。
幸い、日本の劇判は怪奇音楽に長けた作家を多く生んでいる。しかし伝奇作品の音楽を担える音楽家は決して多くない。それ故に、DEEN版「Fate/stay night」で川井憲次氏というトップクラスの伝奇音楽を得た後、今作で梶浦由記氏という負けず劣らずの、しかも新鋭の伝奇音楽を手にしたのは奇跡的とも言えよう。
梶浦氏はストリングスこそ印象的だが、怪奇・伝奇音楽としての本領はデジタル部分にある。
これほど圧力のあるデジロックを組み込みながらもスタイリッシュにより過ぎず、土っぽい怪奇さを保って盛り上げられる作家は他に類を見ない。
梶浦氏がゼロ年代からその名を上げていった理由はそれではないかと思われる。氏の劇判は、土着的でありながら品がある。あるいは、神々しいにも関わらず俗っぽいのだ。
こと今回に関して、フィルムスコアリング音源の組曲化はただの完全版サントラにするよりも正解の選択肢と言える。
一曲一曲は決して単品での完成度は考慮されていない上、時間の短い劇場作品の音楽なので組曲化しても曲の流れが右往左往しない。
ソフト特典をお持ちでない人にも、お持ちの方にも改めて薦められる一枚。
ブックレットには奈須きのこ氏と梶浦由記氏による対談が掲載。カバーイラストは武内崇氏、塗りは逢倉千尋氏。デザインは山口御幸氏、兼田弥生氏(Veia)。