風立ちぬ サウンドトラック
風立ちぬ サウンドトラック
オススメ度 ★★★★★
発売:2013年7月17日 収録時間:53分 定価:3000円 レーベル:徳間ジャパンコミュニケーションズ
宮崎駿監督によるn回目の引退作品。なお撤回したもよう。
鬼気迫る内容の映画だっただけに、最後の宮崎×久石音楽かと思ったがそんなことはなかった。
先行発売のイメージアルバムや交響曲アレンジなどがない、
一切の商売っ気を断った渾身のサウンドトラック。
言わずと知れた業界のトップクリエイターである宮崎駿監督。
その50年近い業界屈指のキャリアの最終着地点となる……予定だったのがスタジオジブリ「風立ちぬ」である。 別段いつも通り引退はしなかった。
内容は正しく溜まりに溜まったエゴの塊というか、監督の趣味とロマンと憧れがただただロマンチックに昇華された映画である。
勿論ジブリ×宮崎駿監督で音楽と言えば久石譲氏は欠かせない。恒例となっていた公開前発売のイメージアルバムや交響曲オーケストラアレンジなどが存在しない、商業的な側面を考慮しない劇判作りとなっている。
本作の中心にあるのはメインテーマメロディである「旅路」を彩るマンドリンやアコーディオン、バヤン、バラライカなどのヨーロッパ楽器である。
特に青山忠氏によるマンドリンのメロディは穏やかな曲調にもかかわらず一度聴いたら耳から離れない静かなインパクトがある。
その静かなメインテーマとの比較によって読売日本交響楽団によるオーケストラのドラマ立てもグッと引き立つ構成となっている。
一人の日本人の物語に、北欧の音楽を与えたのはきっとカプローニ氏への憧れの意志も兼ねたものかと邪推することもできる……気がする。
ちなみにバラライカも青山氏で、バヤンとアコーディオンは水野弘文氏である。
また、「菜穂子」のメロディはどことなく「君をのせて」にも似ており、その哀愁が菜穂子の哀しいまでに美しい姿を想起させてしまう。
特徴的なのは、近年の宮崎アニメ音楽の中でも極端に一曲単位が短く、「劇判」らしさが意図されていること。前述の発売戦略もそうだが、今までの作品よりも交響曲としての体はなされていないのである。
「風立ちぬ」の音楽は、「劇判」的な音楽がかなり多く、ジブリサントラの中でも普通のアニメ音楽つくりに近い。数少ない長い曲での演出の方は、あざという程の映画音楽と化している。
「菜穂子(会いたくて)」「同(めぐりあい)」がそれだ。普通ならちょっと大げさにドラマチック過ぎるほどのメロディ。
大作メーカーとなったジブリはこれまで、商業的な拡張性のある音楽ありきのサントラを繰り出すことが続いてきたが、監督のエゴがむき出しになった本作でついに、監督のやりたいように演出ができる純粋な素材が用意されたのである。
「風立ちぬ」の「劇判」は、「旅路」の名のように堀越二郎の人生(フィクションであるが)に伴うアルバムなのだ。
アルバムとしては「追体験のための音楽」である。本来ならば平凡なサントラの作り方であるが、本作の愛おしさの根源であり、音楽の品質は目を見張るものがある。
2010年代を象徴するアニメサウンドトラックの1枚と言っていいだろう。
アートディレクションは小松季弘氏(情報堂)。デザインは川原樹芳氏、川原瑞樹氏(100KG)。
その50年近い業界屈指のキャリアの最終着地点となる……予定だったのがスタジオジブリ「風立ちぬ」である。 別段いつも通り引退はしなかった。
内容は正しく溜まりに溜まったエゴの塊というか、監督の趣味とロマンと憧れがただただロマンチックに昇華された映画である。
勿論ジブリ×宮崎駿監督で音楽と言えば久石譲氏は欠かせない。恒例となっていた公開前発売のイメージアルバムや交響曲オーケストラアレンジなどが存在しない、商業的な側面を考慮しない劇判作りとなっている。
本作の中心にあるのはメインテーマメロディである「旅路」を彩るマンドリンやアコーディオン、バヤン、バラライカなどのヨーロッパ楽器である。
特に青山忠氏によるマンドリンのメロディは穏やかな曲調にもかかわらず一度聴いたら耳から離れない静かなインパクトがある。
その静かなメインテーマとの比較によって読売日本交響楽団によるオーケストラのドラマ立てもグッと引き立つ構成となっている。
一人の日本人の物語に、北欧の音楽を与えたのはきっとカプローニ氏への憧れの意志も兼ねたものかと邪推することもできる……気がする。
ちなみにバラライカも青山氏で、バヤンとアコーディオンは水野弘文氏である。
また、「菜穂子」のメロディはどことなく「君をのせて」にも似ており、その哀愁が菜穂子の哀しいまでに美しい姿を想起させてしまう。
特徴的なのは、近年の宮崎アニメ音楽の中でも極端に一曲単位が短く、「劇判」らしさが意図されていること。前述の発売戦略もそうだが、今までの作品よりも交響曲としての体はなされていないのである。
「風立ちぬ」の音楽は、「劇判」的な音楽がかなり多く、ジブリサントラの中でも普通のアニメ音楽つくりに近い。数少ない長い曲での演出の方は、あざという程の映画音楽と化している。
「菜穂子(会いたくて)」「同(めぐりあい)」がそれだ。普通ならちょっと大げさにドラマチック過ぎるほどのメロディ。
大作メーカーとなったジブリはこれまで、商業的な拡張性のある音楽ありきのサントラを繰り出すことが続いてきたが、監督のエゴがむき出しになった本作でついに、監督のやりたいように演出ができる純粋な素材が用意されたのである。
「風立ちぬ」の「劇判」は、「旅路」の名のように堀越二郎の人生(フィクションであるが)に伴うアルバムなのだ。
アルバムとしては「追体験のための音楽」である。本来ならば平凡なサントラの作り方であるが、本作の愛おしさの根源であり、音楽の品質は目を見張るものがある。
2010年代を象徴するアニメサウンドトラックの1枚と言っていいだろう。
アートディレクションは小松季弘氏(情報堂)。デザインは川原樹芳氏、川原瑞樹氏(100KG)。

